歯科の保険診療と日本の医療費の歯科の割合
歯科も含めた、いわゆる「病院」で行われる治療には、健康保険が適応される保険診療と、全額自己負担になる自由診療があります。
ここでは、歯科で行われる保険診療にはどのようなものがあるのか?また、歯科以外の他の病院も含めた、日本全体の医療費における歯科の割合はどれくらいなのか?についてご紹介します。
保険診療の仕組み
どの治療が保険診療になるかは、個々の病院ではなく、厚生労働省が決めています。日本では「国民皆保険制度」のもと、国民は全員何らかの公的医療保険に加入しています。
公的医療保険には、国民健康保険や社会保険、共済組合などの種類がありますが、多くの割合を占めているのが、国の財源でまかなう国民健康保険なので、国側としても予算に限りがあります。
そのため、日常生活を支える基本的な治療以上のものは、保険診療が認められていません。
保険診療では、実際にかかった治療費の7~9割を各自が加入している健康保険協会が負担してくれるので、患者さんは1~3割を支払えばいいことになります。その割合は、加入している保険や年齢などによって異なりますが、普通に働いている成人の場合、3割負担が基本になります。
健康保険に加入していない人は、保険診療内の治療を受けたとしても、全額自費で負担しなければいけません。
歯科の保険診療
歯科で認められている保険診療の基本は、「食べることや生活に支障のないように歯や周辺組織を修復すること」です。
むし歯なら、神経の治療や抜歯なども保険診療で行えますが、歯の修復に使える素材は、正面から見える3番目までの歯を除き、頑丈で比較的安価な金銀パラジウム合金です。3番目までの前歯は、白いプラスチック素材になります。
それ以外のセラミックやゴールドでの修復を望む場合は、自由診療になります。
入れ歯も同様に、保険診療で使える素材は決まっています。部分的に失った歯を補う場合は、決まった素材の部分入れ歯と、両側に残った歯に人工歯の橋を渡すブリッジ治療は保険診療で行えます。しかし、骨に直接人工歯を埋め込むインプラント治療はすべて自由診療になります。
また、クリーニングなどは、歯周病治療の目的で行うものには保険が適応されますが、見た目を綺麗にしたいという理由であれば、自由診療です。
矯正治療は基本自由診療ですが、噛み合わせの問題や外観に重大な支障を及ぼすと認められた顎変形症にともなう矯正は、保険診療が適用される場合があります。
日本の医療費全体における歯科の割合
歯科治療は他の医療に比べて高い!と感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、神経の治療や抜歯までも保険診療で行える国はめずらしく、日本の歯科治療は世界的に見て、かなり安価な方になります。
もっと保険診療でできる治療の幅が広がってほしいとは思うものの、2023年度の日本の医療費は全体で47兆3,000億円、そのうち歯科は3兆3,000億円で、約7.0%を占めています。
自分自身のためにも、増え続ける医療費軽減のためにも、可能な限り予防を意識し、日頃から歯のお手入れを行うことが大切です。